【Special】ABEMA北野雄司に訊く、withコロナの格闘技─01─「欧州サッカーリーグの開催マニュアルを」

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【写真】経済活動再開は決して新型コロナウィルス感染への警戒を怠ってはならない──それは格闘技イベントの開催でもいえることだ(C)MMAPLANET

新型コロナウィルス感染拡大は世界中に多大な影響を与え、日常を一変させた。日本の格闘技界でも3月からイベントの中止及び延期が相次ぐなか、4月17日にRoad to ONE02、5月31日にプロ修斗公式戦が会場非公開のABEMAテレビマッチとして行われた。

そして今──緊急事態宣言の解除と、経済活動の再開とともに格闘技界も動き始めた。withコロナの時代の格闘技界はフェーズ01からフェーズ02を迎えたといえる。

そんななかフェーズ01を経験したことで、これからの格闘技イベント及び中継はどのような方向へ向かっていくのか。この間の日本の格闘技を支えたといっても過言でないABEMA格闘chの北野雄司プロデューサーにフェーズ02に向けて、話しを訊いた。


──4月17日のRoad to ONE02、5月31日のプロ修斗。2つのABEMAテレビマッチを終え、ウィズ・コロナの格闘技大会及び中継もフェーズ01から、世の中の流れに沿いフェーズ02を迎えようとしています。そのなかで5月31日の修斗は、4月17日と比較して、どのような点に進歩を感じられましたか。

「4月と5月だと社会の新型コロナウィルスを巡る情勢が違っていました。5月は感染症拡大防止対策がステップ2になる直前で、新型コロナウィルスの感染予防に対する人々の知識が違っていました。

イベントに参加する人々の感染防止に対する知識量が4月とは比較にならないほど多くなっていたので、感染防止に関するお願いをすると、そこを正しく受け止めることができるようになっていました。そういう部分では4月よりも5月はモノゴトを進めやすかったです」

──それも4月があってこそですが、その4月大会はイベント開催に関しては当日の中止もあるのではないかと危惧していました。ライブ中継を行ったことに対して、何かネガティブな反応はありましたか。

「4月にあの大会をやることも、代表取締役社長の藤田(晋)に会議で報告しオーソライズ(承認)を得て行ったことですし、社内的には何もなかったです。ただし、社外からは様々な形で質問をいただくことはありました。

あの時は世論の合意や方向性が形成される前に中継するという部分で、5月よりも理解を得る大変さはありました」

──つまりは誰もがしなかった時に、踏み出したことになります。もちろん、賛成の声ばかりではなかったですが、とある修斗の選手に話を聞くと『あそこまで大会を開くために、多くの人が覚悟をもって臨んでいた。そのことを知ってから、自分も人として役に立ちたい。期待に応えたいと迷いを払拭できた』と言っていました。

「そう言ってもらえると、素直に嬉しいです。ただ、もう色々なことがあり過ぎて、若干記憶がボンヤリしてきています(笑)。

ただし、やって良かったという意見が多くなると、自分のチームであっても気の緩みが感じられました。だから、改めて注意喚起をすることにしました。時間が経ったり世間が柔らかくなると、携わる人の意識も、ある程度緩みますから。

でも、感染者が出ると多くの人に迷惑が掛かるし、色々な人に心配をかけることになります。やはり引き続き、1人も出してはいけないということを肝に銘じ続ける必要があります。それもあって過去に放送してきた大会を振り返り、アレがあったから今がある……というほど自己評価できないです。明日、1カ月後……と先々の心配をずっとしていないといけないですから」

──ライブで格闘技大会を中継する。感染はそこからスタートでない。いつ、どこで、誰が感染しているのかは分からないという現実に実は変化はありません。経済活動を再開したとしても。

「4月、5月、そして今も変わらないのは、会場に到着する前にご家族や限られた人としか会っていなくても、既に感染している可能性があるということです。だから僕たちに防ぎようがないことは起こりえます。

感染が起こった時のことを考えて、その前後の行動を把握するのは当然として、スタッフも極力重症化リスクの低い若い人員を手配していました。あわせて『業務経験よりも、感染予防への意識が高いスタッフを優先する』という指示をしていました。高齢者と同居している人は配置せず、真面目に予防対策をできるスタッフでやってきたという自負はありますね」

──スタッフの意識を高めると同時に、選手サイドも同様に現状をより理解する必要もあるかと2大会を終えて感じました。

「修斗でも『試合が終わった選手からどんどん帰宅する』というガイドラインを選手達に伝えていても、残って試合を見ているチームがありました。坂本(一弘サステイン代表)さんが、帰宅をするように伝えに行ってくださいましたけど」

──この2大会を経て、今後はどのようなスケジュールを組んでいくことになりそうですか。

「もともと修斗は7月に大会を開催予定で、その際は中継もするつもりなので、ぜひともサポートしたいです。またONEチャンピオンシップも再開すれば、渡航制限解除後スタッフを現場に派遣する必要も出てくるかもしれないです。

勿論、かねてからお世話になっているK-1さん、RISEさん、パンクラスさんほか、既に活動していますが……グループ内のプロレス団体であるNOAHさんやDDTさんと中継を創っていくことになります」

──安全対策は完全、満点がないといえますが、今後どのような部分でさらに力をいれていくべきだと考えていますか。

「今の時点で努力していることは、2つあります。世界のメジャーサッカー・シーンでは、ドイツのブンデスリーガが一番最初に活動再開をしましたよね」

──ハイ。無観客でTV中継を行っています。

「欧州のサッカーリーグの開催マニュアルが、大変厳しいというのをどこかの記事で読み、早速その規定書を入手して日本語訳を作成しました。

ぎっしり字で埋められた資料で、過去14日に発熱があったかなど基本的な確認はもちろん、ドアハンドルやリフトボタンを手で触れないでヒジを使う、……消毒剤は乾いた手にこすりつける必要があり、その後は水で洗ってはいけない……等とても細かい点まで指示されているんです。スタッフの間に立てるアクリルボードに関しても、しっかりと記載されていました」

──先日の修斗中継でも使われていましたね。いやぁ、でもそんな資料まで訳されているとは驚きです。

「興味深かったのが、ゾーニングが徹底されているということです。マスコミと選手たちは一切会わない動線になっていました。

修斗でも選手とメディアのゾーンは完全に分けていたのですが、そこは徹底できていなかったです。選手たちがメディアのゾーンに来ていましたからね」

──それは私も試合後の選手に取材をしているので、猛省すべき点です……。

「今後はもっと人の出入りが増えていく傾向にあるので、そこは守っていただくように団体と相談していきたいです。特にそのマニュアルではゾーンと時間帯が決められていて、どの時間帯に誰がどのゾーンにいたのか分かるようになっています。

スタジアム内、スタンド部分、スタジアムの外とゾーンを分けていて、それぞれのソーンに時間帯も記入されており、そこにいる人数も決められています。中継スタッフの上限まで規定されています」

──それは凄いですね。

「これは無観客が前提ですが、それでも感染は有りうることとして、そうなった場合に接触した人を迅速に割り出し、そこからの二次感染を抑えるための手段を講じています。

何時から何時まで、誰がどのゾーンにいたのかをハッキリさせて、ゾーンが違う人々との接触を避けています。今後の収録イベントに関しては、このゾーニングを考えています。先日、修斗の会場をとあるスポーツ・リーグの方が視察されていたのですが、『私たちはここまでできていない』とおっしゃっていただけました。

サッカーの大型アリーナに比べれば、格闘技の会場は構造が単純で比較的動線の工夫がしやすくなっています。あわせてスタッフの意識、対応レベルをさらに育て、欧州のサッカーリーグと同じような対応・準備ができるようにならなければいけないと思っています」

<この項、続く>

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