【写真】MMAは11で戦うが、強くなるためにはチーム=組織力も大切になってくる。岩﨑大河という素材をどのような仕上げていけるのか、日本のMMAの力が問われる (C) KEISUKE TAKAZAWA/MMAPLANET
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年6月の一番、第2 弾は27日に開催されたTTFC08から<岩﨑大河リカルド・サープリスの一戦を語らおう。
──6月の青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?
「岩﨑大河リカルド・サープリスですね。岩﨑選手は強い部分があったのですが、そもそも今回の試合はケージが狭かったじゃないですか。ライト級ぐらいまでの選手なら、あのケージでも足が使えます。でも、90キロとかなる足が使えない。そうなると蹴りも使えなくなっていましたね。
結果、手とケージレスリングに集約されるような戦いとしていました。ようは岩﨑選手が空道で発揮していた強さは、打撃においては余り見せることができない試合でした」
──蹴りの威力が今一つだったのは、ケージが狭いことが大きな要因になっているのですか。顔面パンチがあると、蹴りが変わるということはなかったでしょうか。
「いや、それはありますよ。素面ですからね。行き切れないなので、素面には慣れていないようでした」
──古い話になりますが、1999年4月に行われた北斗旗軽量級最強の男・小川英樹元修斗ライト級チャンピオン田中(健一)塾長の試合を思い出してしまいました。
「そうなんですよね。僕、逆に空道が使っているスーパーセーフをつけてスパーリングをしたことがあって」
──そうなのですか!! 感覚は変わりましたか。
「やっぱり痛みがないから、アレをつけると前に出ることができます。素面とは全然違うと思います。だから、素面への怖さはあったでしょうね」
──それでも組んで勝てるのも、空道の王者所以かと。
「ハイ。あのサイズの日本人選手って、暫らく出てきていなかったので大事にやってほしいですね」
──現状の力がどこまでなのか。期待は大きいですが、しっかりと育てるマッチメイクも必要になってくると。
「ハイ。あの試合だと、分からないですからね。階級が階級なので、どれだけ試合を組んでいけるかですね」
──練習していくと今回の93キロ契約より軽くなると言っていました。普段の体重が90キロ弱であれば、水抜き減量のウェルター級で戦うことができるのか。
「僕はあまり賛成できないですね。大幅な減量が必要だとしたら。だからこそ彼をしっかりと導き、後押しできるような体制を創ることも岩﨑選手が成功するためには欠かせないと思います。
今のMMAの潮流が分かって、練習場所、試合の組み方をリードしないと、なかなか難しいですよ。あの大きさは。ただ大きい人が多くて、ガチガチのスパーだけでも育たないし、かといって技術の指導をしてもスパーリング相手が70キロじゃ試合の時と感覚が違ってしまう。誰が彼の面倒をちゃんと見ることができるのか、そこも気になりますね」
──青木ファミリーでマネジメントというのは?(笑)。
「だって、僕は『そのガタイがあって、そこまで動けるならプロレスやりな』って言っちゃいましたよ。あのガタイで動くことができれば、小型化が進むプロレス界でも才能の固まりですからね」
──そんな人材流出を!!
「岩﨑選手も首を傾げていましたね(笑)。ここはですね、周囲の話ですが……本人の問題でもあります。彼自身が、誰につくのかをちゃんと考えていかなければならない。どういう指揮者、振付師と自分がやっていくのかを。
なんせ素材的には凄く良いですから。90キロを超えている状態でもシェイプできていて、運動能力が高い。あれだけ動ける能力の持ち主はそうそういないです。でも、日本のMMAだと相手がいない。
素材としては特Aでも、GENで練習している日本のトップクラスの重量級の選手と戦わせるには、まだまだ早い。だから、どういう試合を組んでいけるのか。とても難しいです」
──今は無理ですが、韓国で同じような戦績の選手と試合ができれば。
「ハイ。それに試合だけでなく、もうちょい技量がついたらプサンとかにいって練習できれば良いですね。向うのやり方で気合いを注入された方が彼の打撃、まずは組みを切るという戦い方にフィットしていると思います。
ホント、才能としては頭抜けているので。大谷翔平が格闘技やっても才能の固まりですよね。ジョン・ジョーンズの兄弟は2人ともNFLの選手で、彼はレスリングができていた。そして、MMAであの強さですからね。そういうことなんです」