【Special】月刊、青木真也のこの一番─番外編─ヨッカイカー✖和田竜光─02─「武道、武士道とは」

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【写真】1月1日から青木が取り組んでいるモノは、決して武道ではない。青木は武士でも武道家でもなく、競技者だ (C) MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年12月の一番──だが、ここでは本来のピックアップされた3試合からではなく、いきなりの番外編から──12月18日に行われたONE 115で行われたヨッカイカー・フェアテックス✖和田竜光戦について語らう=後編をお届けしたい。

判定に理がない。だから極めろという青木真也の真意は見えてきキーワードを青木は話した。

<青木真也のヨッカイカー・フェアテックス✖和田竜光論Part.01はコチラから>


──それにしても、どう飲み込めば良いのかという判定ですね。

「どう勝つかのっていうのは見えづらいですよね。もうジャッジ次第になって。例えばエリック・ケリー✖田中半蔵はどう思いました?」

──半蔵選手の勝ちです。

「じゃぁ、安藤晃司✖ティモフィ・ナシューヒンは?」

──試合直後は絶対に安藤選手だと思っていました。あの時は大会後にマット・ヒュームとすれ違った時に、『どういうこと?』って尋ねたんですよ。そこでテイクダウンはダメージを与えていないっていう返答があり、『あぁ、そういうことなんだね』と。その後、ONEは裁定基準を公にしましたよね。若松佑弥✖ダニー・キンガド、内藤のび太✖ジョシュア・パシオ戦後に。

「実は分からない判定はかなりあったんです。ただ、それも日本人が絡んでいるから覚えているだけで。きっと僕らが忘れてしまっている外国人同士の試合でも、あるんですよ。

判定勝ちの計算ができないということは、裏を返すと『行け』ってことなんです。だから、武道だろうって(笑)」

──そこで、武道が来ますか(笑)。私には武道って分からないんですよね。武術と違い、武道とされるモノには競技会があるので。

「武道とかって完全に言葉遊びじゃないですか。そもそも曖昧なモノだし。柔術は武道か?とかって話題になることがあるけど、そんなのどっちも良いじゃん(笑)。

嘉納治五郎が柔道を武道って言いだしたのも、社会に受け入れられるためですからね。武術っていうと前時代の野蛮なモノだから戦闘に関わる者を教育に採り入れるときに、武道とした──そういう教育者ですよね」

──と同時にスポーツの開祖かと思います。

「頭が良い人だから、プロモーションに長けていた。だから武道って凄く曖昧な言葉で。武士道とか武道って皆が言うけど……武士道なら葉隠れなの? 新渡戸稲造なの?って話で。君、どっちのことを言っているの? 言っている人によって違うわけじゃないですか」

──とはいえ、和田選手の敗北に関して青木選手が武道という言葉を使うのは、ONEのいうマーシャルアーツという言葉を斜に構えて引用しているということですよね。

「そうですよ(笑)。『だって、武道なんでしょ』って(笑)。で、武道って何? どういう系譜なの?って」

──極めに行くことが武道ということではなくて……。でも、そう書くと極めに行くことが武道かと思う人も出てきてしまいますよね。

「出てくるでしょうね。でもONEだけじゃなくて、武士道って良く使われるじゃないですか。そういう精神性みたいな話を持ち出すと、戦争するしかないですよ。戦争する時に、皆をコントロールするために使った言葉なんだから。

だって普通に生きていると、仇を討つなんてしないですよ。それを圧倒的に人口が少ない武士階級の人間が、自分たちの支配力を強めるために創ったのが武士道ですよ」

──人口比でいえば7パーセントの武士が、8割以上の農民を抑えるために。実は外国人の格闘技関係者と話している時にサムライの子孫とか言われるのですが、たまに『日本の殆どがサムライではなく、ファーマーの子孫なんだよ』って話すと凄く場が白けてしまうんですよね(笑)。

「アハハハ。だって武士道のような規範意識を持っているかと思われるけど、そんなものはないですからね。規範意識がないから、持ち込んだわけで。貞操観念とかも、そうですよね。無いから戦後に持ち込む必要があった」

──それにしても、武道という言葉の解釈は難し過ぎます。明治時代に時代遅れとなった武術に関しては、現代社会においては試合がないモノ。使わないことが一番良いという、技術を磨いている。試合には出ないし、イザコザは避けるというのが私の理解です。

「まぁ護身ですからね」

──ヨーイ、ドン!!で1✖1で戦うということが、もう武術とは違ってきますからね。集団で稽古をしたり。

「武術になると水掛け論ですよね。武術的に誰が一番強いのかっていう話になると、それは米国大統領だろうって。すげぇ下らない話になってくる(笑)」

──その通りだと思います。身も蓋もない話になります。

「守る者がいないヤツが一番強いとかね。だから僕らのやっていることに──美しい精神性とか持ち込まれると、怖くて……」

──ケージで戦う青木真也は武士ではないですしね。

「ハイ。競技者です。だから和田さんの試合に関しては、競技者としてはONEという場では、圧倒的に攻めないとダメだということが可視化されたんです。ずっと格闘技をやり、見てきた俺ですら全く判定基準が分からないんだから。

それと判定は覆らないと言ったんですが、サゲッダーオ(ペットパヤータイ)は勝った試合があとから覆っていましたね。あとから負けにされた(※2018年6月のマー・ジャワン戦)」

──ハイ。ジョルジオ・ペトロシアンとペットモラコット・ペッティンディーアカデミーの試合は、ペトロシアンの負けからノーコンテストになって、再戦でペトロシアン勝利というのもありました。これって身も蓋もないのですが、競技、武道でなく武術っぽくないですか(笑)。

「もう分かんないですよ(笑)。よく分からないから、仕方ねぇなぁ──圧倒しろ、極めろって話なんですよ」

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