【Special】月刊、青木真也のこの一番:12月─その参─メイソン・ファウラー✖石井慧「試し割り」

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【写真】石井慧のSUG挑戦第一弾はOTでメイソン・ファウラーに敗れ、ベルト奪取とはならなかった (C)SUG

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

2020年12月の一番、第三弾は20日に行われたSUG19からメイソン・ファウラー✖石井慧について語らおう。


──青木真也が選ぶ2020年12月の一番、3試合目をお願いします。

「SUGの石井慧選手とメイソン・ファウラーの試合ですね」

──SUG20の石井選手✖クレイグ・ジョーンズではなくて。

「ハイ、まぁクレイグ・ジョーンズとの試合はそうなるよなってことですし。SUGといえば5分でオーバータイム。ならメイソン・ファウラーの方かと。

石井選手とファウラーだったら、絶対に5分で決着しないですよね」

──ただ本戦5分で、ファウラーが戦っていたのが驚きました。これまで寝技に付き合わないでいた彼が積極的に動いて。石井選手のパス狙いをオモプラッタで切り返して攻めたりして。

「アイツ、これまでは攻めていないですよね。なんか異種格闘技っぽくて良かったです。今回の試合は。ただ練習を見ていてもイゴール(タナベ)とかだったら、石井選手を攻めることができるけど、俺たちだったら無理ですからね」

──体格差はあるとしても、ファウラーも力があるのだと……。

「だから逆に日本人で100キロを超えていると、練習するのも大変だと思いました。そしてあれだけ体躯が合って、組み技の心得があるとクレイグ・ジョーンズぐらいでないと取れないわけですよね。

それが発見でしたね。あと、何と言ってもファウラーはSUGルールに強い。その証拠にSUGではオーバータイムで2度クレイグ・ジョーンズに勝っているけど、ADCCでは逆にギロチンで一本負けしていますしね」

──それでもADCC北米トライアルで優勝し、世界大会でも1回戦は勝っています。

「そういう選手でも5分では、石井選手を取ることができない。そしてオーバータイムに強い。ちょっとね、不思議ですね。で、究極をいえばSUGに勝つには汗っかきが良い(笑)」

──アハハハハ。ファウラーが滑るという情報も伝わってきました。

「まぁ汗もあると思います」

──いずれにせよ、オーバータイムになって最初からシートベルトでなくスパイダーウェブを選択する石選手は、非常に珍しいタイプだと思いました。

「僕ならバックですね」

──そうだと思います。結果的にスパイダーウェブを選択し3回連続で同じように逃げられました。やはり、そういうモノなのでしょうか。

「う~ん、そこはちょっと分からないです。でも十字は取るのも逃げるのも難しいと思います。だって僕らは普段、ああいう風にならないことを重視して練習しているわけじゃないですか。あんな形になったら、もうその試合でどれだけ追い込まれているんだってことですから」

──確かにその通りです。

「あそこまで取られるのは、弱いってことですからね。バックとは違って」

──オーバータイムのセオリーではバックで絞めを極められた選手が、逆転を賭けてスパイダーウェブを選択するという風です。

「一発逆転を賭けて。でも石井選手は最初から一発逆転を選んでいた。あの逃げ方ができるのもファウラーがSUGの専門家だからです。逆に僕らはあのルールで勝つことを一番とすることはないじゃないですか(笑)」

──ハイ、そうだと思います(笑)。

「結局、SUGにしてもEBIにしても、コンバット柔術もそうですね。時間切れだからって、なんであんな決着方法なんだろう。釈然としないです」

──言ってみればパターゴルフですよね(笑)。

「ホントに。試し割ですよね。そこまでのプロセスはどこに行ったんだって(笑)。スッ飛ばして、あれで負けたとしても、負けた気がするんでしょうかね。

今回、それと気づいたことがあって──クレイグ・ジョーンズはEBIでは勝っているけど、ADCCは準優勝なんですよね。ゲイリー・トノンもADCCでは勝っていない。かといってIBJJFの道着でも勝っていない。つまりADCCやIBJJFのタイトルとは関係ないところで、ステータスを確立してやっていける世界があるということなんですよね」

──う~ん、ただしADCCで柔術界の強豪を倒したり、追い込んで名前を挙げたというのはあると思います。

「なるほど。で、そういう選手がPolarisとかEBI、SUGでも活躍して、セミナーや指導で食っていける。ネットの指導とかで。だから確立しているんですよね、そういう世界が。やはりそこは凄いと思います」

──私がSUG19で思ったのは、MMAファイターがMMAファイターとグラップリングで戦うと溌剌と攻めるということだったんです。

「ドスアンジョスとセラーニですね。まぁ、海賊ビデオですよ(笑)、スパーリングを流す。試合では蹴りを出さない選手が実はムエタイの練習をしていたり、テイクダウン&コントロールの選手が足関節を使っている。そういう海賊版ですよね。

北岡悟がQuintetのことを練習試合って言ったんです。グラップリングのことを。それと同じですよね。で、そこでビジネスも成り立っている。名前があるから可能なんでしょうけど、誰も損していないですからね。選手もファンも楽しめて。まぁドスアンジョスもセラーニもあれだけ組みができるから、思い切り打撃で思い切り攻めることができるんですよね。

ドスアンジョスは打・倒・極、全てを鍛えている。トライアスロンMMAファイターですよ。だからこそ、ファイターのなかで評価が高いと思います」

──では石井選手については、どのように思われていますか。

「石井慧のゴーイング・マイウェイ振りも素晴らしいです。一周回って、何でも見えている。ファイターとしての選択は他にもあるんじゃないかと思うことはありますけど、そこも含めてゴーイング・マイウェイです。

試合展開と同じで、もっとズル賢さがあっても良いのに常に真っ向勝負しています。ちょっと他にいないと思います」

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