【Special】月刊、青木真也のこの一番:2月─その壱─アンドラジ✖佐藤将光「ダーティボクシングと首相撲」

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【写真】 離れてダイナミックなパンチや蹴り。そして、ゼロ距離でのエルボーヒジとアンドラジが佐藤を相手に強さを見せた(C)ONE

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。

青木が選んだ2021年2 月の一番、第一弾は1月22日に行われ、2月5日に中継されたONE116 Unbreakable03 からファブリシオ・アンドラジ✖佐藤将光戦について語らおう。


──青木真也が選ぶ2021年2月の一番、最初の試合をお願いします。

「アンドラジと佐藤将光の試合は1月に行われたのですが、大丈夫でしょうか」

──ハイ、初見が2月になってしまうのでどうしようもないですしね。ただし、アンオフィシャルでも私どもは試合結果は中継日でなく、実際に試合が行われた日時で整理したいとは思っています。それはともかく、アンドラジと佐藤選手の試合は青木選手がジェイムス・ナカシマに勝ったのと同じ日に同じ会場で行われ、同じファイトウィークをシンガポールで過ごしていたことになります。

「ハイ。帰国する便は同じだったんですけど、1週間シンガポールに滞在していて佐藤選手の顔を見たのはPCR検査と計量の時だけでしたね。試合当日は会うこともないし、結果も知らないという感じで。

だから今のONEのイベントは誰が試合をしているのか、全体を選手は知る由がないので。スタンプが自分と同じ日に試合をしていたとか、知らなかったです」

──コロナ禍とはいえ、歪さは感じます。録画中継でもやはり〇月〇日に行われた試合というのを知らせるのが、我々の慣例だったので。

「まぁ、でも戦う当人としてソコは気にならないですよ。あまり感じないです。通常の大会でも形式上、誰がいて、誰と戦って、結果がどうなったのかということが目や耳に入ってくるから知っているだけで。それを知らなくても、困らないですしね」

──なるほど。選手としてはそういうモノかもしれないですね。そういうなか、なぜアンドラジ✖佐藤将光が今月の一番に選ばれたのでしょうか。

「佐藤選手は──実はONEで鎬を削った試合ってハファエル・シウバ戦だけだった。だから、ビビアーノに挑戦できなかったとか話題になっても、相手はマーク・アベラルドとクォン・ウォンイルなんだから、そりゃあ勝つだろうっていう相手です。この3勝でチャンピオンシップってそんなに甘いのって、正直思っていたんです」

──とはいえ与えられた相手に3連続フィニッシュ、1つはハファエル・シウバです。そしてビビアーノ✖ベリンゴン時代が続いたバンタム級戦線で、次期チャレンジャーに目されるのは普通のことではないでしょうか。

「そこで世界挑戦っていうテンションなのかって、周囲も含めて。リネケル、ベリンゴンに勝ったわけじゃない。そこに勝つと説得力が違ってきますよね」

──ONEはランキング1位が世界挑戦という風ではなく、タイミングで組んでいく風ではあるかと思います。

「だからチャンスがあれば──というのはあるとは思います。ビビアーノがやるなら、世界戦だったでしょうし。そこでアンドラジが相手になった。結果論として、どうせ負けるならリネケルとかの方が良いですよね。

でも試合前は佐藤選手のイージーファイトになると思っていました。アンドラジは中国で負けているし、レコードもそれほど良くない。ONEで勝った相手もアベラルドですからね。そういう風な気持ちは正直ありました」

──未知の部分が多く、不気味な相手。ただしMMAだから佐藤選手が勝つという想いでした。

「それがワンサイドでしたね、実質は。良いところを消された感じで。3Rを佐藤選手が盛り返せたのも、アンドラジがセーフティリードを築いて戦ったからだというのもありますし」

──アンドラジの良さはどこでしたか。

「間が良かったです。反応も良かった。クリンチのエルボーも上手だし、ONEのルールに適していましたね。クリンチで打撃を入れることができて、アクションが大きい打撃も持っていました。ジャブにしても、攻撃している感のある攻撃です。踏み込みとかアクションが大きくて、あの戦い方はONE向きです」

──クリンチの攻防なのですが、佐藤選手は組みと打撃の融合という部分で本当に考えて、練習でも実践してきた。ただし、タイ・クリンチに勝てなかった。

「だってダーティーボクシングとタイ・クリンチじゃ歴史というか、積み重ねてきた年月が違いますよね。いくらダーティーボクシングって言っても、ここ何年かの話じゃないですか。でもムエタイの首相撲は歴史が有効性を証明している。だから、僕はダーティーボクシングっていうモノは、どこまで有効かという風には感じちゃっています」

──ただ高度な首相撲は、未だに足に組んで良いMMAでそれほど見られるモノではないです。

「う~ん、僕は凄く基本的な技術として、MMAにおいて首相撲は大切になってくると思ってきました。ジャブやダブルレッグのように。ただし、首相撲もグラウンドも──いってみれば即効性が少ないから、それほど日本では流行らないと思います。パンチ&ローとテイクダウンディフェンスというスタイルが主流のままで。

そういうなかでMMAでは名前が知られていなかったアンドラジは、首相撲をしっかりとやってきていた選手だった。引き出しを持っていましたね。とはいってもリネケルとやるとリネケルだし。それはラカイからやってくるスティーブン・ローマンにしても、良い選手かもしれないけどBRAVE CFで誰と戦ってきたのかっていうことになりますよね」

──……。4月29日に組まれるローマンのONE初陣ですが、荷が重いと?

「そもそもリネケルの実績と比較すると、失礼だろうと思います。2枚……いや3枚は落ちます。それはアンドラジも対しても、同じことが言えて。格が違うと思います。リネケルに対して、アンドラジやローマンでは。スミマセン、盛り上げるようなことがいえなくて──本当の気持ちを話してしまって……」

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