【Special】月刊、青木真也のこの一番:4月─その弐─緑川創✖西川大和「花が開く要素のある試合を」

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Nishikawa vs Midorikawa【写真】 17歳のMMAファイターが、新日本キックとWKBA世界王者に臆することなく向かっていった(C) MMAPLANET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2020年4月──格闘技が、この惑星から消えかけた1カ月──の一番、第二弾は17日に行われたRoad to ONE02からムエタイ72.5キロ契約戦=緑川創✖西川大和の一戦を語らおう。


──2020年4月度、世界中から格闘技が消えた1カ月。青木真也が選ぶ、この一番。2試合目は?

「緑川創✖西川大和のムエタイの試合ですね。西川選手もレコードが汚いんですよ。彼も負けたり、ドローが多くて。でも17歳でしょ? ああいう風にプロモーションが彼を登用するのは危ないな、とも感じました。良い選手だけに」

──北のMMA=PFCで頑張って、韓国のTOP FCでも戦っています。

「勿体ないですよ。そして怖い。ああいう試合を受けていると、壊れてしまいます。今回のようにMMAで将来有望な若い選手とキックのトップランカーとやらせてしまうのは、怖かったです。緑川選手有りきだし。僕らからすると西川選手自身、キャリアを大切にしてほしいですね」

──ここで難しい試合を受けて、次の機会を得る。そういう選択が地方選手にはあるのでしょうね。

「日本のMMAは地方に対して、首都圏が強気でいける歴史がありました。地方の選手に対して、チャンスがないから『いつ、誰とでもやれよ』っていうのは……ちょっと業界の悪しき習慣ではありますよね。

だからこそ地方の選手は機会があれば、跳びついてしまう。まぁ日本のMMA業界が地方の選手まで大切にしてあげられる状況にないです。西川選手は17歳で素質があって、あれだけ頑張っている。それなのに首都圏のロジックで登用される。それが現実ですね」

──指導者の方も、チャンスが巡ってきたら掴ませてあげたいですし。

「ハイ。その通りです。それが日本の現状です」

──格闘技は特に地方都市と首都圏の差が大きいですね。プロ野球やJリーグのチームがある都市でも、格闘技の大会は数百人規模になります。大阪や名古屋、札幌、福岡なら1万人越えのイベントはK-1やPRIDE時代はあった。ただし、地上波がない大会は人口200万人都市圏でも一気に数百人規模になる。そういう意味でもRIZINの地方都市大会は価値があるかと。

「RIZINってなんだかんだ言っても大切なんです。TVは人口の多いボリューム・ゾーンが強い。そこと格闘技の東京中心は似ているかと。格闘技界は東京にだけ集中しているので。と同時に地方都市でもABEMAとか新しいメディアも浸透してきていると思います。

地上波とネットTVがあるように、格闘技界もね──新しいやり方というか……西川選手にしても東京にパイプを創って、試合前にキャンプみたいにできる状況とか持てたらなって感じますよ」

──そういうことになるのですね。

「それでも西川選手はKO負けもしなかったし、認められる試合ができた。だからこそ次は、こうでない試合が組まれて欲しいです。彼が切磋琢磨できる試合。少しでも花が開く要素のある試合に、ですね」

──そういう意味では時間の制約もあったRoad to ONEで見られた課題ですね。力の差があったマッチメイクは。

大会終了後、青木は西川を直接労っていた

大会終了後、青木は西川を直接労っていた

「これ言うとアレですけど、言うたらプロモーター側に強いプロレスみたいな大会になる。

それは格闘技としてはフェアじゃない。でも今回は特に時間もなかったし、それは仕方がなかったです」

──コロナの時代の格闘技大会として、それがニューノーマルになるのかもしれないですね。

「金策の部分も含めて、色々と皆が模索し始めた感じはします。ネットTVの需要が高まっている。ただし、企業は金を貯めておきたい。そこで広告とかどうなるのか。それが格闘技界、そして地方の選手の需要にも関係してくるでしょうね」

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