【ONE】人員削減と経営状況、そしてイベント再開についてチャトリ・シットヨートンに訊く

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【写真】写真は昨年7月のマニラ大会の記者会見から。会見時のチャトリには珍しく笑顔を浮かべており、今回のインタビューでも非常に穏やかな言葉の運び方だった (C)MMAPLANET

今月15 日(月・現地時間)に追加資金調達とレイオフを発表したONE Championship。

この発表の余波は、思えば──格闘技業界にあって過去にほぼ例のない解雇発表を軸に、ネガティブな反応が当然のように起こっている。

MMAPLANETでもとにかくプロモーションとして、今後のスケジュールについての言及が必要だと注文をした。ここでは人員削減とONEの経営状況、そして今後の活動再開についてチャトリ・シットヨートンCEO兼会長に尋ねた。


──今回、チャトリさんにインタビューをさせていただこうと思ったのは新たな投資を得た、そして20パーセントの人員削減を行ったONEの現状についてです。

「願ってもないことだよ。今、本当に多くの間違った情報がメディアで流れている。だから、正しい情報を伝えたいと思っていたんだ。特に米国のメディアはUFC発信の話を事実のように書いている」

──それはどのような記事になっているのですか。

「ONEはもうすぐバンクラプシー(倒産)するというモノだよ。とんでもないデタラメだ。何より私は日本のファンがそのような記事を信じることないよう、真実を伝えたいんだ。

2週間前、シンガポール政府のファンドであるテマセク・ホールディングスとシリコンバレーのセコイア・キャピタルから新たなに7000万ドル(約75億円)の投資が決まった。ONEチャンピオンシップは1億ドル(約106億)以上のキャッシュを銀行に有している。

今、世界中の経済がこれ以上ないほど困難な時を迎えているけど、この最悪な状況が続いたとしても、現状のキャッシュで最低でも5年間は活動に支障がないんだ。だから米国のメディアがいうような、ONEがすぐに破綻するようなことは絶対にないことを日本の皆に伝えて欲しい」

──その新しい投資を受けるための条件が、20パーセントの従業員の削減だったのでしょうか。

「そんなことはないよ。今年、50大会を開催する予定だったけど、Covid19の影響で半年を過ぎても7大会しか開くことができていない。そして新型コロナウィルス感染拡大の影響で、今年の後半もどれだけのイベントを開くことができるのか。ばかりか、来年がどうなるのか誰も予想できない。

東京オリンピックですら、見直し案が出ているのは日本の人達なら誰もが知っていることだと思う。世界中の企業が先の見えない状況に対して、何らかの手を打たなければならない状況だ。

先行き不透明な状況で、何も対策を講じない方が企業としてどうかしていると思われるはずだ。今、ONEチャンピオンシップには十分な資金がある。資金がある間に対策を講じなければならない。現状を過信して、この経済状況でコストカットをしないと会社の将来を危ういモノにしてしまう。こういう話をすることで、ONEの現状について日本の人達は理解してくれるだろうか? ONEチャンピオンシップは心配ないと」

──日本の格闘技ファン、格闘技関係者にとってONEのビジネス・スケールは余りにも大きく、従来の日本の格闘技界と違います。なので現状の赤字額等を目にすると、どのように投資分を回収できるのか──しかも新型コロナウィルス感染拡大が影響を及ぼすはずだという思考になりやすいです。

「あぁ、なるほど……(微笑)。傲慢な意見だと捉えて欲しくないんだけど、それは本当に心配する必要はないと伝えて欲しい。ONEが日本で行ってきた100万ドル規模の投資額は、私たちのビジネス全体でいえば僅かな額でしかないんだ。

我々、ONEチャンピオンシップのビジネスは1億ドル規模であり、それ以上の額を掛けていくつもりだ。日本に投資した金額は本当に大したコトじゃないよ。

ONEは格闘技のイベントを開催しているけど、従来の格闘技ビジネスにはなかった新たなビジネスモデルの開拓者であり、この8年間もそうだし、これからもまだ市場を開拓する段階にある。これまでの市場になかった新しいビジネスを展開している。

そうだね……ONEはスタートアップ企業で、シリコンバレー・スタートップ企業──アップルやグーグル、フェイスブックの活動当初のように巨額の投資を行い、会社の規模を大きくしている段階なんだよ。

そしてシリコンバレーのセコイア・キャピタルやシンガポール政府系テマセク・ホールディングというインベスターがONEにはついている。つまり、インベスターがONEの将来を保証しているということなんだ。ONEは銀行からの借入金がない企業で、逆に銀行に100億ドルのキャッシュを有している」

──一般人からすると巨額の損失もONEにとっては、投資段階の数字でありKPI(重要業績評価指数)に達していると考えて良いでしょうか。

「Amazon、Youtube、Facebook、Whatsapp、シリコンバレー・スタートアップ企業でいえば……アマゾンは2億ドルを投資し、14年続けて損をしてきた。フェイスブックは5年間、ロスしてきた。ユーチューブもロス続きだ。そうやって投資をして、世界を代表する企業に成長した。

我々が今、重視しているのは当座のプロフィット(利益)などでなく、数字に表れる視聴者の数、TVの視聴率、ライブ中継が何か国で行われているのかだよ。それがONEにとってKFS(最重要プロセス=事業成功の鍵)で、KPIは達成している。だからこそ将来性を買われて、追加資金調達が実際に行われることになった。その将来像からすると、過去8年間のロスなど気にすることじゃない。もっと大きなビジョンを持っているからね。

ただしCovid19は予想できなかった。これからも予測できない。会社の将来のために現時点の人員削減を行ったんだ。テスラも過去にオペレーションの再構築のために人員削減を行っている。Netflixも同じだよ」

──この状況が続けば、ファイターの契約解除もあり得ますか。

「そうならないために、状況が許せば……つまりシンガポール政府が渡航制限を解除した時に、すぐにイベント再開できるよう準備してきたよ。現状として、政府は7月1日を目途にしているようだけど、それは絶対ではない。絶対的ではない状況で、スケジュールを発表することはファイターやファンを混乱させるだけだと私は思っている。

UFCがこの状況で活動再開に踏み切り、ここまでイベントを開いているのは銀行に巨額の借入金があるからだ。イベントを行わないと返済ができなくなる。ONEにバンクローンはないし、大会を行わなくてもキャッシュが手元にある。

そして7月になり渡航制限が解かれるようだと、7月中に活動を再開する。それは日本のファンに伝えて欲しい」

──分かりました。日本のファンに必ず伝えます。

「オネガイシマス(※日本語で)。ONEのビジョンを理解していないメディアに、色々なことを書かれると私も正直、怒り心頭だったけど……日本のファンには真実を知り、私たちのビジョンを共有してほしいんだ。

これから日本への渡航が、どれだけ可能になっていくのか。10月の東京大会も含め、将来が見えてこない。東京五輪があるまで日本でビッグショーを開くことはできるのか、誰にも分からない。だから、一度立ち止まる必要が生じた。でも、必ず今から言うことを記事に書いて欲しい……『チャトリは、今の儲けなんてどうでも良い。今、一番大切なのはONEを応援してくれるファンなんだ』とね」

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