RIZIN.35&RIZIN TRIGGER3rd総評
メインはサトシがリベンジ達成。前回と違い打撃を怖がらずに打ち合っていけたことで、組みでもチャンスを作れた。試合後のマイクでBellatorのタイトル挑戦をアピールしていた一方、大会後のインタビューではパトリッキー戦は「まだ早い」とも言っていたが、万全を期すため&アメリカ向けに名前を売るためにBellatorで1戦挟むのが妥当か。RIZINではもう相手がいないので、次戦でもうBellatorに出てほしい。いきなりベンヘンあたりとの試合が組まれたら面白い。
ライト級はサトシ1人が抜けすぎている状態。日本人トップ2の矢地と武田はいずれもフィニッシュ負け。前回のライト級GPには川尻と上迫が出ていたが、いずれも初戦で完敗した。サトシの相手にならないレベルの外国人ファイターでも日本勢には厳しい。実力順で組んでいったら、ライト級日本人選手はナンバーシリーズに出られないのでは。今はTRIGGERがあるのでちょうどいいかもしれない。ただ、この中に西川大和が入ってきたらどうなるかというのは興味がある。
フェザー級は大方の予想を覆し牛久が王座防衛。ここで負けていたら前回の勝ちが帳消しになっていた。一方の斎藤は、若い牛久に連敗したことで、完全に格付けがついてしまった。これがダイレクトリマッチの怖さ。フェザー級もケラモフやアグォンクラスに蹂躙されているし、Bellatorランカークラスが来るようだとこの階級の日本人選手も危うい。
女子スーパーアトム級は伊澤が3Rの腕十字のピンチ以外は危なげなく完勝。浜崎はタックルが全く切れなかったのが痛かった。伊澤は試合後にGP開催をアピールしていたが、たしかに大島、パク・シウあたりもいて駒は揃っているものの、伊澤が頭一つ抜けているし、この階級は外国人の強豪も少ないので、やる意味は薄いと思う。
判定について
あらためて、RIZINの判定基準は以下で公開されている。
RULES ルール - RIZIN FIGHTING FEDERATION オフィシャルサイト
打撃によるKOまたはTKO、または絞め技などによるタップアウトまたはレフェリーストップで試合が決定しない場合、判定となる。判定の基準は以下の優先順位で、試合全体を総合的に評価する。
1. 相手に与えたダメージ
打撃とグラップリングを同じ重みで考え、効果的な打撃やグラップリング(投げ技・サブミッションなど)による試合への影響度を評価する。
試合への影響度とは、ノックアウトやタップアウトなど試合終了につながる可能性のあるダメージやアドバンテージがあったかどうかを意味する。2. アグレッシブネス
ノックアウト及びタップアウト等の試合の決着を狙う攻撃についてどちらが上回っていたかを評価する。打撃、投げ、サブミッションなどのダメージ(効果)を評価するものではなく、積極的且つ攻撃的な行為そのものを評価する。3. ジェネラルシップ
試合のペース、場所、ポジションなどの支配についてどちらが優れていたかを評価する。ただし、スタンドポジション及びグラウンドポジションに占めた時間割合を考慮して評価を行う。
100点満点で、1.は50点、2.は30点、3.は20点で評価されている。「ノックアウトやタップアウトなど試合終了につながる可能性のあるダメージやアドバンテージがあった」場合は50点となり、2.および3.の評価にかかわらず、1.を獲得した選手の勝ちとなる。
注意したいのは、50点満点ではなく、「50点か0点か」の2択であること。「確実にダメージはあったがKOするほどだったとはいえない」という場合にも、50点のうち40点入れるといったジャッジはない。
RIZINの判定は下記で試合数日後に公開される。
JMOC競技運営協力大会 試合結果 | JMOC | 一般社団法人日本MMA審判機構
先日のRIZIN.34での大原 vs. アキラのスコアはこちら。
■第11試合 RIZIN MMAルール ライト級(71.00kg) 5分3R
〇大原樹理(KIBAマーシャルアーツクラブ/71.00kg)
判定2-1
×アキラ(武蔵村山さいとうクリニック/&MOSH/70.85kg)
レフェリー:豊永 稔
ジャッジ:
柴田 旭/赤・大原 [D 50-0/ A 0-30/ G 0-20]
松宮智生/赤・大原 [D 50-0/ A 0-0/ G 0-20]
片岡誠人/青・アキラ [D 0-0/ A 0-0/ G 0-20]
2者は3Rの大原の攻めを「試合終了につながる可能性のあるダメージがあった」とみなして大原に入れているのだろう。
それが妥当かどうかはともかく、すべての試合が同じ基準で裁かれているならいいが、試合ごとにブレがあるように思えてしまう。ユニファイドルールでは「有効打の数」が重要な評価になっているが、RIZINルールは「ダメージ」のみが評価基準で、有効打は評価対象になっていない(もちろん手数が多ければ2.のアグレッシブネスでの評価につながるが)。客観的な「有効打数」に比べて、ダメージがあったかどうかは主観の部分が大きく、どうしても判断が分かれやすい。
さらに、3.のジェネラルシップがもっと判断が分かれる項目になっている。
■第14試合 RIZIN MMAルール 68.00kg契約 5分3R
×中村大介(夕月堂本舗/67.80kg)
判定1-2
〇山本空良(パワーオブドリーム/67.70kg)
レフェリー:福田正人
ジャッジ:
松宮智生/青・山本 [D 0-0/ A 0-0/ G 0-20]
豊島孝尚/赤・中村 [D 0-0/ A 30-0/ G 20-0]
片岡誠人/青・山本 [D 0-0/ A 0-0/ G 0-20]
「ポジションの支配」は分かるが、「試合のペース」をどちらが握っていたかというのは、どういう基準で判断しているのかもわからない。この試合だけでなく、このジェネラルシップのジャッジは割れることが多い。一方がポジショニングで完全に上回った場合以外はだいたい割れる。この項目だけが、1.2.と異なりマスト判定になっている。
試合を見ていると、ラウンドごとに流れが変わることは良くある。その中で、ラウンドごとではなく1試合トータルでどちらがペースを握っていたかと言われても、統一した答えを出すのは難しい。これだけ割れるところを見ると、この項目については統一した判定基準はジャッジの中でも作れていないと思う。
結局のところ、大差がつかない結果の場合は、ジャッジがどちらがペースを握っていたと思うかの判断になると思って見るしかなくなる。
せめてラウンドごとの判定であればまだわかりやすいし、それだけ(ラウンド数の分だけ)サンプルも増えるので、どうジャッジしているのかを判断することができる。トータルジャッジは、1R10分2R5分の変則ラウンド制のように、そのうち廃れてほしい。見ていて分かりづらくなるだけで、メリットが感じられない。
今回のジャッジはそれほど微妙なものはなかったが、TRIGGERの渡部 vs. 須藤のみがスプリットになった。渡部はジェネラルシップ(ポジショニング)は制していたが、須藤が足関を狙いに行ったのがアグレッシブと捕らえられたのか。正直ディフェンスされていて決まる見込みのない攻めに見えたが、あれを「一本を狙う姿勢」と捉える基準であるなら、それは一つの基準としていい。しかしこの試合もジャッジが割れているので、結局RIZINの判定基準は良くわからない。