【写真】もちろん、こういう攻防を知ることも大切だが、それ以外の多くのことを学んできた(C)MMAPLANET
12月4日(金・現地時間)、シンガポールのシンガポール・インドアスタジアムで開催されるONE114「Bing Bang」。同大会では松嶋こよみがゲイリー・トノンと対戦する。
過去に対戦経験のない組み技、グラップリングの世界の頂点にあるトノンとの対戦を前に、IGLOOブラジリアン柔術、そして今成正和との練習をルーチンに加えた松嶋をABEMA TVのTHE WOUNDERが追った。
MMAPLANETではイグルー柔術での練習後にトノン戦、そして対策に特化したインタビューを行っており、ここで紹介したい。
その形に入られない試合で、入られた状況を想定したトレーニングで松嶋は何を学んだのか。
──ゲイリー・トノン戦に向けて、IGLOO柔術で岩本健汰選手たちと練習をされていました。
「これまで目を背けてきたのがグラップリングだったんです。ロータス世田谷ではMMA選手とMMAのグラップリングはしてきたのですが、グラップリングのためのグラップリングを知るために、やられながら練習させてもらっています」
──これでまで目を背けてきたのというのは?
「試合でも自分がガードを取ったり、マウントを取られるとか、テイクダウン後にスイープされたりとか殆どなかったです。でも、トノンと戦うことがきっかけになったのですが、今後自分が成長していくためにも目を瞑ってはいられない部分でした」
──ロータスでの岩本選手とイグルーでの岩本選手は違いますか。
「違いますね。ロータスでは立ちからで僕が切ったりできるのですが、寝技からのスタートだと組手を一つ、一つしっかりと取られてしまって何もできない。(ABEMAが撮影した)映像に残っていると思いますが、散々やられているので、その一つ一つを自分の中でインプットできているかなって思います」
──その点はMMAグラップリングの時とは、違うということでしょうか。
「そこまで深く触れないというか、スパーリングをやって終わりっていうことが多かったです。
それがイグルーでこうやって練習していると、分からなかったこととか尋ねることができて……手を置く位置、その一つだけで全然展開が変わってきます。それが分かるようになったのも、ここで練習するようになったからなので良かったと思います」
──とはいえ、足関節にしてもその形に入らせないことが一番の試合になります。
「ハイ。と同時に何が起こるのか分からないですから。トノンは特別な選手だと思いますし、自分がいくら切れると思っていても、そういう展開になることは十分にあるでしょうし。今回はそうなると思っています。知らないといけないことです。自分がやりたいことをまずやるのが一番ですが、転ばぬ先の杖というか……間違いなく必要になるので」
──MMAグラップリングのスパーで足関節、三角絞めを狙われることもあったかと思います。そのなかでエスケープした場合、今、ここで得たような知識があって防御できていたのでしょうか。
「多分なかったです。なかったというか、このスパーリングをしてないと立って終わりという考えでした。ここでの練習はそういうことではないので、練習のなかであの形があり、逃げ方を教えてもらえることは大きいです。
本当はああいう風にならない。拒絶するつもりで戦いますが、そうは上手くいかないことは分かっています。ここでの練習で、自分の弱さを知ることができました」
──ゲイリー・トノンも同じような想いでMMAに向き合っているような気はしませんか。殴られそうになっているところで組み合い、下になると殴られる状況で極めに行くなど。
「そんなことないんじゃないですか(笑)。どういう神経をしているのかは分からないですが、あそこまで特別なモノを持っている人はハメれば良いと思っているような気がします。僕は全国チャンピオンになれたわけでもないし、何か突出して突き出たモノはないけど、トノンに関していえば『寝技で勝てる。打撃は貰わなければ良い』という風に考えて、組み立ててくる。組み立て方は向うの方が絶対に簡単だと思うので、それとどういう風に戦うのかがキーになってくるのかと」
──ルールは違いますが、トノンと肌を合わせた北岡選手、青木選手からアドバイスはありましたか。
「北岡さんは『これまでバック取られてきたなかで、もうダメだと思ったのはアレが初めてだった』と言っていました。青木さんは『意識しないほうが良いよぉ』ぐらいのことは言ってくれましたが、それ以上深くは話していないです。
あと今成さんとも練習させてもらっていて、『本当に何でもできるよ』というのは言われています。もちろん足関を意識しているのはありますが、それだけではないです。だからこそ、ここでの練習が役立つと思って練習しています。
ただし、やるのはMMAですから。グラップリングを戦うわけではないですし、準備としてはしっかりできています」
──これまで松嶋選手は、組まれて嫌だという状況で試合をしたことはそれほどなかったのではないかと。
「ないですね。粕谷さんとの試合はバックチョークを意識して練習していましたけど、ここまでレスリングをしたくないという気持ちは初めてです」
──そういうなかで自身の打撃に関しても、考え方は変わってきますか。
「今までと違って、今回は我慢しないといけない試合だと思います。打ちにいっても取られる可能性はあるでしょうし。その可能性があるなかで戦わないといけないので、今回はどこまで我慢できるか」
──打撃を当て、トノンが弱気になった。そこで攻めていくと、一発で足を取られている可能性もあります。自分がいつ有利なのか、心理面を考えることはありますか。
「トノンが弱気になったと思って僕が行くことが嫌なことでないのであれば、自分が出ないことが嫌なことかもしれない。どれだけ相手に嫌なことをするのか──ちょっと当たったからといって強気になって行くのは向うの思う壺でしょうし。
そこは岩﨑先生と話をして考えてきています。打撃にしても、精神的な部分でも話をしてイメージは凄くついています」
──組みになると、逃げる一方でしょうか。
「そうですね。そうしないと危ないです。ロールしてもしょうがないですし、今練習していることがどれだけ生きるのかと──とはなりますが、足を触られてから対処をしてももう遅いと思っています。まずは本当に一方的に逃げるつもりで戦います。
そこをトノンも考えているでしょうし、何手先まで逃げることができるのか。北岡さんとも『1回切られた後のことは考えているよ』とは話していました。スクランブルの際の自分の立ち位置、そういうことまでスパーリングで意識して練習してきました。それが試合で出るかというと分からないのですが(笑)、そこまで意識はしてきました」
──寝技を逃げるというのは、言葉的には逃げるですが、その先に勝利があるので精神的には逃げではない。強い気持ちを持って逃げるということかと。
「あまり相手の気持ちよりも、自分がどれだけ平常心でいられるのか。触られてラウンドを取られたと思った後でも、自分が変わらずに試合に挑めるのか。そういうのを意識しないと、今回は勝てないと思っています。逃げるというのも印象は悪いからもしれないですが、それで相手が疲れるという部分も関係してきます。まぁ、まずは我慢。我慢、我慢、我慢して最終的には勝てる。そういう展開にしたいです」
<この項、続く>
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