【写真】平良がケージで見せた恐ろしいまでの強さ。その強さを北米と比較するための物差しが今のJ-MMAはない(C)MMAPLANET
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
2021年3月の一番、第ニ弾は20日に行われたShooto2021#02から平良達郎前田吉朗について語らおう。
──青木真也が選ぶ2021年3月の一番、2試合目をお願いします。
「平良達郎選手と前田吉朗選手の試合ですね。平良選手はまず体がデカいです」
──大きかったです。本来はフライ級ですが、当日計量でバンタム級というコロナ禍ウェイトでの試合でした。
「ということは前日計量で、リカバリーをしたらもっと大きくなる可能性もあるっていうことですよね。前日計量で56.7キロだったら、下手すると当日は64とか65キロぐらいになるかもしれない。
1階級上でもリカバリーがないことを考えると、当日計量の方がちょっと小さいんじゃないかって思います」
──いわゆるONE階級なのですが、ONEは前日に計量とハイドレーションが終わります。現実的にリカバリーがあるので、現状の日本の当日計量は海外のどこにも当てはまらない計量方式です。ハイドレーション・チェックもないですし。
「平良選手は『半身浴して1キロぐらい落として計量に行った』ってnoteに書いてあったんです」
──えっ? 免疫力の低下を避けるために水抜き減量はせずに1階級上というのが前提だったかと。
「そうなんですよ、当日でも水抜きしてんじゃんって(笑)。だから当日計量でも2キロとかなら水抜きしていく選手は、今後も出てくるでしょうね」
──なるほど、修斗は次回の5月大会から前日計量に戻すそうですが、パンクラスの5月大会はどうなるのか。
「こうなると計量に関しては、前提が変わっていますよね。それに、前日計量に戻すとまた失敗する人間が出てくるだろうし」
──それこそ通常ということですね。ところで平良選手のパフォーマンスは、どのように感じられましたか。
「恐ろしいモノを見た気がしました。当たり前のことを当たり前にやる凄さ。結局、格闘技って当たり前のことを当たり前にやって勝つことが一番強いし、大切だと思うんです」
──それを攻撃だけで、攻防がなくやり切っていました。
「つまり凄く基本的なことを全部やっていることになります。パンチを当てて、蹴って、クリンチしてバックを取る──みたいな。それが基本通り出来ている強さを凄く感じましたね」
──UFCを熱望する平良選手ですが、前田選手に見せたあの強さを海外勢にも同じように見せることができるのか。なかなか今の日本で戦っていると、計れない部分があります。青木選手がUFCへ行こうと考えていた時期は、国際戦というのは……。
「僕、キース・ウィスニエフスキーぐらいでした。菊池(昭)選手に勝って修斗の世界チャンピオンにはなっていたのですが」
──その菊池選手がジェイク・シールズに勝っていたのですね。
「ハイ。まぁUFCも時代が違っていましたけど、当時の修斗のベルトは通行手形にはなっていましたよね。実際に、僕自身もできるんじゃないかって思っていましたし。それに世界的に見ても、UFCがまだ断トツの一番とかじゃなくて、カウンターカルチャーとしていくのが面白いと思っていました。
2回ぐらいトントンって勝てば世界に挑戦できるんじゃないかって。結局、僕はUFCに行かなかったけど、DREAMの時とかに北米との物差しになる相手とは、結構やっているんですよね」
──エディ・アルバレス、ギルバート・メレンデスを筆頭に修斗ではUFCに行く前のジョージ・ソティロポロス、DREAMでWEC王者だったロブ・マックロー、今やAJ・マッキーの父という肩書のアントニオ・マッキー戦は、体温が上がりました(笑)。
「マーカス・アウレリオ、リッチ・クレメンティ、ライル・ビアボーム、ONEでもカマル・シャロルスと戦わせてもらいました。
今はこれだけ世界中でレベルが上がってしまったMMAなので、平良選手がどれだけできるのかって分からないですよね……正直」
──物差しになる海外勢との戦いが、それでなくても少なくなったのがコロナ禍では、いよいよ望めない状況です。
「そういう意味では、僕らの頃は日本で戦っていてもUFCでやれるという手応えを感じることができる試合ができました」
──ハイ、だから『UFCに行かないのか』という声が聞かれたわけで。『UFCに行ってほしい』とか『行かせてあげたい』ではなかったですよね。
「今の子たちは、それができない。そして、当時と今が違うのは、あの頃は軽量級は日本がリードするぐらいの状況だった。UFCである程度活躍した選手を招聘しても、前は勝てました。でも、今それが可能になったとしても、ライト級とか誰も歯が立たない。
ジェニー・ケースとか、本来は階級が下のディエゴ・ブランダォンに勝てないのが現実です」
──ばかりか、今は世界中のどこでも強い選手が生まれています。
「だから世界との実力差とか踏まえると、選手を育てていく環境なんか……危うくなっています」
<この項、続く>
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