【Fighters’s Diary con on that day】「試合がない日々」を生きる北岡悟の声 on 2014年9月22日

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Satoru-Kitaoka【写真】番組内でも北岡の言葉は刺さるモノが多かった。「依存すら超えている」──さすがです (C)ABEMA & MMAPLANET

全世界を巻き込む新型コロナウィルス感染拡大の影響は当然のように日本の格闘家たちの人生にも影響が出ている。試合がない、大会が開かれない、練習場所の確保も困難だ。

そんな今、格闘技を愛する全ての人へ──ABEMA格闘CH が公式YouTubeチャンネルで Fighter’s Diary Ep.02が19日(日)より、アップされている。

第2回でクローズアップされた格闘家はKRAZY BEE軍団(朴光哲、矢地佑介、田村一聖、あい)、佐藤天、浅倉カンナ、北岡悟、堀江圭功(と高阪剛)の9人だ。

Fighter'sDiaryFighter’s Diaryは3週に渡り、3つのエピソードで総勢16人の格闘家たちの声をYouTubeで伝え、26日(日)午後7時より、ABEMA格闘CHにて Fighter’s Diary完全版が放送される。

そんなFighter’s Diaryでは「試合がない日々」を格闘家たちはどう生きるのか? ──という今の声を集めた。MMAPLANETでは、タイアップ企画ならぬボーディング企画を提案。MMAファイター達が今を発せられるようになった原点を探る上で、あの日の彼らや彼女達の声=on that dayとして、MMAPLANETインタビュー初登場時の声を紹介したい。

題してFighter’s Diary con on that day、第8回は2014年10月2日公開、9月22日に取材が行われた──ワールドスラムT準決勝=リッチー・ウィットソン戦に向けて調整中だった──北岡悟のあの日の声をお届けしよう。


<リードを含めた完全版はコチラから>

──北岡選手をMMAPLANETで取材させてもらうのは、2012年4月の北米トレーニングの出稽古の旅以来となります。J-CAGEという国内のケージ大会を扱うコンテンツを立ち上げたことで、今回の取材を実現できることとなりましたが、この2年5ヶ月の間、北岡選手はMMAPLANETの主たる取材対象である海外MMAから遠い場所で戦い続けてきたこととなります。そして、あのトレーニングの旅に参加した選手で、MMAPLANET再登場に最も時間を要したのが北岡選手で、一人前がGRANDSLAMに出場した伊藤健一選手でした。個人的にもここで北岡選手の話を聞けることが嬉しいです。

「ハイ、ありがとうございます。僕はケージやユニファイドに遠いところにいましたけど、まだ現役やっています(笑)。」

──そんななか9月20日、UFN52で金原正徳選手のセコンドに就かれていましたが、どのような印象を持ちましたか。

「UFC全般ですか?」

──はい。

「僕、金ちゃんの試合しかアリーナにいることがなくて、モニターしか見ていないんです。だから何とも言えないですけど、金ちゃんの試合は長年の想いが実った瞬間を共有させてもらい、凄く光栄でした」

──『ありがとう、UFC』というセリフがとても印象に残っています。

「彼は……不良上がりだとは思うのですが(笑)、本当に明るい性格だし、良いですよね」

──UFCに関して、特に感じ入るモノはなかったですか。

「いや、でも素晴らしいと思いましたよ。控室にいても、そういう風に思えました。日本人選手が多かったですけど、そこは日本を代表する指折りの選手ばかりなので、取り組み方だったり、意気込みも高い。日本のトップの人たちばかりだから。やっぱり、そういうモノに触れたり、同じ空間にいられることは心地よかったですね」

──UFC JAPANが終わってから2週間後にはVTJとパンクラスという国内有数のケージ大会が開催され、ここにきて北岡選手がパンクラスでケージ、そしてユニファイド・ルールに挑みます。

「う~ん、去年の年末のラマザン・エセンバエフ戦も、4月の宮崎(直人)戦もヒジ有りだったので、リングでの試合でしたが徐々に寄っていっているというのは有りました。ただ、DEEPはタイトル戦なので、サッカーボールキックも有りなんですよね。そこもDEEPに関しては、菊野戦以外はタイトル戦なのでリングで戦うということは外せない要素だったんです。一時期、選手が同意すればケージでもタイトル戦が行われるようになりそうなこともあったんですが、結局のところタイトル戦はリングに拘るという風に落ち着いたようですし。ただ、今後もルールに関してはユニファイドに寄せるようになるとは聞いています」

──ではケージという部分については、どのように考えられていますか。

「ケージに関しては、意識して練習はしてきました。でも、たまたま……ですよね。海外に戦場を求めなかったこと以上にたまたまです」

──今回出場するパンクラスが、たまたまケージを使用していると?

「パンクラスで戦うこともたまたまに近いかもしれないです。去年の9月に出て、また出たいとは思っていたんですけど、それは遣り甲斐でもあるし、生きるためでもある。両方ですよね、ハイ」

──その想いがあっても、DEEPのチャンピオンということもあり、なかなか実現には至らなかったわけですが。

「難しい時期もありました。電撃和解というか茶番劇というか……でも、良かったと思います。選手の立場からすると、試合の機会が明らかに増えるわけですから」

──何れにせよ、和解劇(笑)が北岡選手のパンクラス出場という形で表れたのであれば、それはファンにとっても歓迎すべきことですしね。

「僕だけでなく、いわゆる中堅どころの選手が、行き来できるようになっています。両団体がストックしている選手のなかにも、やっぱり対戦カードとか扱いが難しくなってくる状況の選手がいても、パンクラスとDEEPの交流によって目新しい顔合わせが生まれることは本当に良いことですよ。それに若くてやる気のある選手なんて、めちゃくちゃ試合経験を積めるわけですしね」

──ここに修斗、あるいはVTJが加わるとさらに良い状況になりますよね。

「VTJなら階級も同じですしね……。でも、僕が出ていないところの話は……(苦笑)」

──現状、北岡選手は戦い勝手の良い場所で戦っていくということでしょうか。

「何とも言えないです。戦い勝手の良い……、何だろうなぁ。DEEPに関してはチャンピオンですから、タイトル戦が中心になるはずです。ファイトマネーの額からも、頻繁には使い辛いだろうし、それはパンクラスも同じことで。でも、ディファ有明で外国人、僕が出るからワールドスラムも復活したというのもあるだろうし、よくこの場を与えて下さったと思います。そこは本当に感謝しています」

──トーナメントとなると、またDEEPライト級王座防衛戦とスケジューリングのバッティングが起きないよう、団体間での調整も必要になってくるのかと。

「優先順位としてはDEEPですよね、チャンピオンですから。ただ、究極的には僕の気持ち次第です」

──このところ、選手を拘束したいのであれば、契約が必要という意見が多く聞かれるようになりました。

「DEEPとは一度、防衛をすれば自由にして良いということになっています。返上しても良いけど、僕が防衛戦を行う気持ちでいるなら、挑戦者に関しても佐伯さんのなかでは意中の選手はいるようです」

──それが決してTDCホール大会のようなビッグショーではないと。

「今年は4月にすでに防衛しちゃっていますからね。う~んパンクラス出場が決まっていなかったら、TDCホール大会に出ていたかもしれないです」

──昨年9月のパンクラス再出場の要因の一つには20周年記念大会ということもありました。今大会もパンクラスに出場することで、特別な思い入れは持たれているのですか。

「去年の9月にパンクラスで戦い、『またパンクラスで見たい』と言ってもらえたし、それ以上に僕自身も『また、ここに出たいな』という気持ちもありました。その両方の部分とプロとして……、スイッチというか、DEEPとパンクラスの両方に出ることで注目もされますしね。それとパンクラスのデカゴンの中で戦い、勝ちたいという気持ちもあります」

──10角形のケージで戦うことで、戦い方にアジャストは必要だと感じていますか。

「相手のリアクションという要素はありますが、何といっても広いですしね。修正すべき点は出てくると思います、格闘技に関しては僕もバカではないので考えてはいます(笑)。やってみないと分からない部分はついて回りますし、そういう怖いもの見たさのような興味もあります」

──北岡選手はテコンドーを取り入れ、ステップなどにも工夫をしてきました。リングから角のほぼないデカゴンで戦うには、間合いや出入りも変化が必要になりますか。

「変化というよりも、よりこれまでやってきたことが生き、より使えるようになるんじゃないでしょうか。と同時にベタ足でもプレッシャーを与えて、相手に触ることも大切だと最近は感じるようになっています。それを実践したのが、8月のONE FCで青木が見せた試合ですよね。あれってもの凄いことをやったと思うんです」

──今、日本人でカマル・シャロウスを一方的に下せる日本人はいるのかという部分でも、より評価されても良い試合だったと思います。

「いや、誰もできない。できないですよ。でも僕は僕でステップ等歩法を意識しつつ、日本で一番と言っていいくらいの練習をできていると思っています。それこそUFCの日本大会に出場したほとんどの日本人選手とこの試合前にスパーしていますし」

──現在はプロ練習やスパーリングはどこで行っているのですか。

「DEEPジムが閉まってから、ここロータス世田谷で従来の金曜日だけでなく月曜日にもプロ練習を開くようになり、シンガポールに行っていない時は青木も来てくれます。あとは火曜日はHEARTSに行き、木曜日がTRIBE。スポット的にAACCとBRAVEで1、2回練習させてもらいました」

──宮田和幸選手率いるBRAVEですか。場所的にかなり遠くないですか。

「三郷ですから1時間半から2時間ほど掛かりました。でも、BRAVEにはケージがあるので、2回ほど寄せてもらって先週は宮田さんや芦田(崇宏)君とスパーをしたんです。その前は川中(孝浩)君っていう70キロの選手がいて、彼ともやりました。ケージの感触を掴みたかったので。アッ、ケージだと大阪でタクミさんのパラエストラ大阪にも行きましたよ。大阪ではタクミさん、別府(セブン)選手と練習しました」

──大阪にもケージを体感しに行ったのですか。

「はい、それだけでなく舘和男さんにテコンドーの指導をしていただくのと併せて、タクミさんのところでケージで練習させていただこうと思って」

──なるほど。本当に真剣に格闘技と向かい合っていますね。AACCでは強烈な追い込み練習が行われていると窺っています。

「大塚(隆史)選手や鈴木JAPAN選手がいて、3分間のMMAグローブをつけたフルスパーをやるので、実戦に近い緊張感を持って臨むことができます。マットスペースも広いですし、感覚的な部分を掴みやすいですね」

──試合が近づいていますが、技術練習は余り行わないのですか。

「技術練習? 打ち込みはHEARTSやTRIBEの練習メニューに組み込まれているので、それが技術練習ですかね。なんだかんだと言って、青木も技も教えてくれますし(笑)。あとはこれまで練ってきたものを確認するように、自分も教えています。それが僕的には技術練習に近いですかね。基本、スパーリング中心ですから」

──スパーは先ほどAACCでフルスパーがあると言われたように、他ではシチュエーション・スパーが中心ですか。

「僕が管轄の練習で、壁を使ったりする限定スパーを一時期、極端に増やした時があったんですけど、結局は元に戻って今はフル・グラップリングのスパーを大事にしています。人それぞれ、色々な入り方があってムエタイを重視して、ムエタイをしっかりとやりこむ人もいます。フィジカルを重視する人もいれば、ボクシングを重視する人もいる。柔術を大切にする人もいますよね。僕はフル・グラップリングを大事にして作っています」

──北岡選手がフル・グラップリングを重要視していても、出稽古中心だとそのジムのメニューに当然、合わせる必要があるので、自分の想い通りの練習ができないというジレンマに陥ることはありませんか。

「火曜日のHEARTSでは打ち込みから、シュートボックス。そこからシチュエーションのMMAスパー。木曜日の長南さんのところ(※TRIBE)はフィジカルで体を温めて打ち込みからシチュエーション。だからこそ、月曜と金曜日はここで、ひたすらフル・グラップリングのスパーをやって、おしまいって感じで。土曜日もここでやることが増えて、軽量級の子が多いから、その子たちをただひたすら苛めるだけ(笑)。打ち込みのつもりで、スパーをやっています」

──つまり、約束ではなくても自分の好きな動きができる練習ですね。

「もう、容赦なくやっています。土曜日はフル・グラップリングからフルMMAを回すような感じなんですけど、フライ級やバンタム級の子を抑えつける練習だと思ってやっています。それで全然、問題ないです。逆にシチュエーションだけだと不安になります。限定スパーだけだと、僕は無理です」

──もう、今から10年も前にスクランブル渋谷で、所属先や戦っているプロモーションに関係なく選手が集まりスパーリング・セッションを行うようになりました。八隅孝平、植松直哉が声を掛け、北岡選手をはじめ青木真也、今成正和、大石真丈、渡辺直由、所英男、宮田和幸、佐藤ルミナ、朴光哲、孫煌進、アマ時代の田村一聖らが一同に介していました。あの時代のフル・グラップリングを北岡選手は、今も大切にしているということですね。

「あぁ、あれがYBTの始まりで、プロ練習の走りですね。でも、その原点の金曜日のYBTは過疎化が半端ないです(笑)。それ、このインタビューで声高にかつ切実に訴えさせてほしいです。キムさん(※キム・ジュン)とタイマンでやっていますから(笑)」

──キムさん……。佐藤ルミナ選手つながりでK’z Factoryに出入りするようになり、YBTには初期から参加していた知る人ぞ知るキムさんですか。

「ハイ、今は茶帯で。トライフォースでノーギのインストラクターもしていてテクニシャンだし、良い練習になっていますよ」

──道場主の八隅さんの名前が出てこないですが(笑)。

「もう色々とボロボロで、スパー練習はたまにしか一緒にやっていないです(笑)。月曜日の方は、今日なんかでも青木、加藤忠治、中島太一君が来てくれて凄く良い練習ができているんです。だから、金曜日ですね(苦笑)。先週なんかはもうキムさんしか来ないだろうということで、自分でスケジューリングして夜にBRAVEへ行くことを決めていました。そこで宮田さんや芦田君とMMAの練習をして。

今、色々なジムで練習させてもらっていて上の方……指導者の方はやっぱりしっかり色々と分かってらっしゃいます。宮田さん、大沢さん、長南さん、阿部さんもそう」

──分かっているというのは?

「凄く見えてらっしゃいますよね。選手世代が指導者になり、変わってきていると思います。僕もそうなるのかなぁ……、それはちょっと嫌だなぁ(笑)」

──その指導者が師匠となっていくのか。韓国のトップ選手は指導者を人間として慕って、指導者も対戦相手の研究などに関しては、今の日本の多くのケースより熱心なように見受けられます。

「あぁ、なるほど。そうなんですねぇ、UFCの日本大会を見ていても、そんな感じはしていましたよ。でも、それって単純に熱意、熱意の差ですよ。韓国には凄く興味あります。クミMMAのイ・チャンソプから練習来てよってメールをもらって」

──チェ・ドゥホのコーチの?

「ハイ、そうです」

──韓国もそうですが、UFC日本大会を見ていてアライアンスMMAなど、チームとして機能しているので、日本人選手は個人の能力として、そこまで開きがないはずなのに、結果という部分で違いが出てきているのは怖いです。

「まぁ、色々な部分。トータルで負けていますよ。いっぱい負けていると思います」

──そのようななか、出稽古中心の北岡選手は米国人のリッチー・ウィットソンが相手となります。

「長岡に一本勝ちしているけど、ONE FCで一本負けしているんですよ。良いテイクダウンを取ったのに、そのあとやられて。ニコニコ動画で解説していて、『えっ』と思いました。不思議な選手ですね」

──ラマザン戦もありますし、外国人と戦うと何が起こるか分からない怖さがあります。

「今は外国人に限らず、凄いスピードでこの競技は全体的にレベルが上がっているので全く油断はできないし、自分に余裕を持つようなことはないです。勿論僕自身も強くなってきているとは思いますし、今年に入ってから自分のなかで感じてきているものもあるのでそういったものを出したいです」

──ウィットソンを相手にここは気を付けないといけないという点は?

「気を付けないといけないのは、全ての局面です。長岡にはサブミッションで勝っているわけだし、外国人ですし、打撃、グラップリングともに一発がある。だからといって、警戒しまくって丁寧にお行儀よくやるつもりはないです。自分で研鑽を重ねてきたものをぶつけてやる気持ちでいます」

─ではさきほど言われた、強くなっていると感じる部分とはどこになりますか。

「グラップリングとか、ちょっと変わりました。アマチュア・レスリングなのかどうか分からないですけど、レスリング的な繋ぎとか分かったりだとか。グラップリングも、よりMMAというか制圧するグラップリングになってきたので。スタイルは変わったと思います。練習で足関節とか、全然やらなくなりました。まぁ、本当のところはずっと前からやっていないんですけどね」

──制圧するスタイル、足関節は仕掛けない。つまりは上を取るということでしょうか。今の判定基準だと、下からのコントロールは制圧することにはならないですよね。

「下からの制圧もあるんですけど、それって下になっているようでなっていないんですよ。そこらへんは、言葉にしづらいですね。ただ、お客さんがどういうものを見たいのかっていうのもありますし」

──観客の目を意識しますか。

「いや、それはやっぱりないですね。そこまでは考えていません」

──4月の防衛戦を見ていると、攻め続ける気持ちがあるのは理解できたのですが、その攻めよう、やろうという気持ちによって必要以上に動き、疲れた部分があったのではないかと思いました。

「そうじゃないとダメなんじゃないですか。疲れないと。そんな楽したらダメだと僕は思っています」

──体力を失い、疲れると判断ミスを生むのであれば、スマートに戦っても良いかと。宮崎戦は特に、トップを取ってから絶対的に自分で局面を打開しようと動き続け、かなり疲れていたように見えました。

「いや寧ろ、またアレがやりたいぐらいですけどね。相手より疲れて負けるなら、それまでじゃないかと思います。ドロドロにして、自分が疲れる以上に相手を疲れさせる。そういう戦い方ができれば、それが理想的な戦いです。そんな行儀良くできないです、僕」

──自分のペースなら、動いていてもそれほど疲れないこともあるかと思います。

「だから、そこまで……心配してもらっているほど疲れていなかったと思います。傍からどう見えるかは分からないですけど。出し切ったら偉いと思うわけじゃないですけど、僕は出し切りたい」

──北岡選手には出し切らなくても良いから、結果を出す。そういう風に求めてしまいます。

「なるほどっ!!  それはありがとうございます。やっぱり、心配してくれているんですよね?」

──心配とかではなく、格闘技は練習で苦しい目にあい、試合では苦しまずに勝てるのが一番だと思っています。だから、いうなれば疲れようが、疲れまいが勝利が大切だと。

「なるほど、なるほど……ですね」

──疲れた方が敗北に近づきますしね。

「……難しいですね。そこまで、強くないですから」

──そうとも思っていません(苦笑)。

「それも、ありがとうございます。弱者の理論じゃないですけど、弱者の理論と強者の理論のミックスがやりたいというか……。相手より強いからこそ、相手より頑張る。そして相手より弱いからこそ、相手よりも頑張らないといけないみたいな。変なこと言っているかもしれないですけど。人間って両方持っているものじゃないですか。そして、僕の良さは両方あることだと思っています。

それこそギュッと抑え込み、上からドミネイトしまくって勝てれば良いですけど、やられかけた時に下から捲れたりとか。柔術の技とか、切り返す技を持っているのと、持っていないのでは全然違うじゃないですか。凄く劣勢な場面で、一発逆転を狙うことができる技があるのか、ないのか。そういう跳ね返す力と、パーフェクトゲームで勝てる力、両方を持っていたいです」

──パーフェクトゲームで勝てる気持ちを持って、劣勢になってから返す準備もしておく?

「そういう風でいたいです」

──ウィットソン戦はスカッと勝ってほしいと周囲も期待しているとは思うのですが、北岡選手はドロドロの局面になることも良しとしているようですね。

「そうですね、別にそれでも分かる人には面白いモノに……でも、それじゃダメだな。う~ん、ライブ観戦を楽しみにしてくれている人に……何ていうんですかね、見応えのあるモノを見せるという自信はあります。根拠を問われると、答えられないですけど(笑)。そういう取り組みはしてきているつもりです」

──あとから振り返って見る気にはなれないけど名勝負、そういうライブ特有のモノもありますよね。ライブでも振り返りでも名勝負といわれる戦いとは別に。それこそ、北岡選手が言ったような手に汗握る見応えのある戦いが。

「こんだけやっていますし……。他に何もやっていない。なくても良いけど、責任感もあります。だから、見に来てくれたファンが喜んでくれる試合はやります」

──責任感というのは、どこに対しての責任感ですか。

「DEEPのチャンピオンであることもそうですし、パンクラスであったり日本の格闘技を代表しているような気持ちは持っています。未だにアイコンの一つである自負があります。ただ、格闘技界のためにと思う気持ちは、犠牲の心ではないです。自分のためであり、張り合いがあるからです。総合格闘技をやっている北岡悟というモノが好きで、誇りを持っていることを最近、また気づきました。だからこそ、やっていないことはやっておきたい。

そういう気持ちがあってのケージでユニファイドなわけです。リングではなくなったパンクラスに出ておきたいと思ったのも事実ですし。10月5日より、先のことは終わってから聞いてもらえればと思います。ただし、やってなかったことをやっていく──その道標ではいたいです。そのためには勝ち続けること……が、自分自身の張合いをもたらしてくれるので。そのためにも勝利が大事になってきます」

──これが最後の質問です。今回のパンクラス出場に際し、日本人相手ではなく、外国人選手と戦いたいという気持ちでいたのでしょうか。

「僕と釣り合う相手と戦いたいとは思っていました。そうしたら日本人は、資格を持っている者がいなかった。資格がある人がいなくなってしまったので。こういうことは縁だから、仕方がないです。でも、パンクラスに出場し続けるのであれば、ディファ有明という箱を考えると日本人選手と戦う方が絶対に良いと思います。言っても日本の格闘技界で、僕と戦うことは相手にとって張りのある試合になるはずだから。そこに手を挙げてくれるような選手と戦いたいです。そのためにも僕も勝ち続けて、相手にとって張り合いのある選手でありたいです」

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