コロナ後の世界に残したい激闘10撰~三島☆ド根性ノ助×伊藤崇文

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ルールや階級の整備が進み、スポーツライクになってきた昨今のMMA。試合前に激しい舌戦を繰り広げていても、戦い終えればノーサイド。笑顔で抱き合ってお互いを称え合う。そんなシーンをよく目にするようになりました。
その一方で生死を賭けた存在の奪い合いのような試合にゾクゾクするのは私だけでしょうか。自分の負けを認められない、認めたくない。死んでも死に切れない往生際の悪さが滲み出た試合。その象徴言うべき試合が2002年のDEEPで行われた三島☆ド根性ノ助×伊藤崇文の一戦です。
当時修斗を主戦場としていた三島のパンクラス出場を巡って、修斗パンクラスの関係が悪化。その状況下で中立の立場をとっていたDEEPのリングで当事者の三島とパンクラスismに所属する伊藤の対戦が決定しました。両団体の威信を背負って殺伐とした雰囲気の中で試合は始まります。
しかし結末はあっという間に訪れます。開始直後の差し合いから三島がフロントスープレックスでテイクダウン。起き上がろうとする伊藤に対して素早くバックに回ると、一瞬の隙を突いて腕十字で一本勝ち。僅か53秒で因縁マッチは幕を閉じました。

おいおい、どこがベストバウトだ?と突っ込みが入ると思いますが、私の脳裏に強烈なインパクトを刻んだのは試合直後。タップした伊藤は悔しさを爆発させてリング上で絶叫。大口を開けて泣き叫ぶと、マイクを握って再戦を要求するわ、退場時にヤジった観客に向かっていこうとするわ、感情をむき出しにしていました。まるでオモチャを買ってもらえなかった駄々っ子のよう。YouTubeの動画ではその全てを捉えてはいませんが、徐々に感情を露わにしていく伊藤が垣間見えます。

その姿を目の当たりにして、往生際が悪い、恥ずかしいと思う一方で、その試合に賭ける想いやこだわり、諦めきれなさが痛い程伝わってきました。だからこそ16年以上経った今でも覚えているのでしょう。決着がついたからといって自分も負けをそう簡単に認められない、割りきれいという伊藤の気持ちも十分に理解出来ます。ああいう姿や試合は人間の不器用で醜い部分がダイレクトに伝わってきて、嫌いじゃないし、格闘技の魅力のひとつと言っていいでしょう。果たしてコロナ後の時代にこんな試合に出会う事が出来るのか。
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