【写真】こんな時も笑いも交えて、現状を話してくれた小見川 (C)MMAPLANET
5月6日、DEEPでDJ.taikiと対戦予定だった小見川道大。今月7日に佐伯繁代表がDEEP JEWELSとのダブルヘッダーの中止を発表した。
ファイターとしてだけでなく、道場で指導を行い、少年柔道の大会も主催する彼は、この間──そして今をどのように過ごしているのだろうか。
柔道家、小見川道大に訊いた。
──今回はファイターとして、そして柔道場の指導及び経営者として小見川選手の話を伺いたいと思います。
「ハイ、宜しくお願いします」
──まず5月6日に決まっていたDJ.taiki戦、大会自体が今月7日に中止が発表されましたが、それ以前にも小見川選手の周囲でコロナ感染拡大の影響があったかと思います。
「まず3月1日に少年柔道の大会を主宰する予定だったのですが、コロナ感染の影響で延期を決めました。なら、自分が試合したいと思いました。あの時は5月になれば騒動も落ち着いているという気持ちでいたんです。
正直、少年柔道の大会を開けなかったのは気持ち的にも落ち込みましたし、子供たちにも自分が戦うところを見せてやろうという想いでした」
──しかし、現状を考えると五輪の開催を視野にいれていたことは信じられないですね。
「ハイ……本当に。あれからイタリア、米国と感染が拡大した時には、ちょっとこれはヤバいなってなってきましたね。僕自身、試合に出る気満々で調整をしていたのに、こんな状況で試合をして良いのかという気持ちが大きくなっていきました。
米国で柔道の指導をしている方から現地の説明をしてもらっている時にも『日本が簡単に捉えていると、感染拡大は一気に来ますよ』っていう話になって。深刻さが日本とはまるで違うので、だんだんと考えるようになりましたね。3月の終わりぐらいから、本当にそんな風になっていて──僕も結局、伝える前に中止の発表があったのですが、試合に出るのは止めると佐伯さんに連絡を取る気でいました」
──小見川選手も弥益選手と同じ考えになっていたのですね。その頃は道場の方も休館されていたのですか。
「そうですね。1度、3月に休館して──そこから、道場で柔道をするのではなく、公園に行って一緒に運動したり、遊んだりする感じで子供たちとは接してきました。
それが全柔連から緊急事態宣言が東京や神奈川にあったときに道場での集団トレーニングの自粛要請もあり、道場が閉めたままです。子供たちのとの公園での運動をストップしました。もちろん、月謝ももらわない状態です」
──正直、道場主として休館し、ファイターとして試合に出ない。なかなか厳しい状況ではないでしょうか。
「収入はゼロですよね(苦笑)」
──小見川パイセンは豪快な人だけど、繊細なところもあるじゃないですか。だから、落ち込んでいないかと……。
「いや、落ち込んでいる場合じゃないですよ。道場に通っている子供たちは、僕を本当に慕ってくれています。あの子たちに落ち込んだ姿なんて見せられないですからね。今も1日に2度、オンラインで指導しています。
ゲストで日本代表の選手を呼んで、インスタで子供たちと話してもらったりとか。道場内だけですが、そういう活動は続けています。コロナが落ち着いた時に、子供たちが元気で柔道をできる。そのために動き続けたいです」
──いやぁ、パイセン恰好良いです。
「いや……アハハハ」
──今、人間の本質が見える時かと感じます。
「僕は格闘技に関しては、自分のエロ……じゃなくて、エゴでやっています」
──こんな時にもありがとうございます(笑)。
「アハハハ。柔道をやってきて、格闘技……MMAでも柔道を貫いてきました。柔道場を持つようになり、僕に柔道を習いたいと言ってくれる子供たちが入門してくれた。
小見川道場、僕にとって一番大切なのは子供たちなんです。ここで子供たちが稽古ができなくなると、絶対に柔道人口は減ってしまいます。
ウチの子供たちだけでなく中学3年生、高校3年生、もう柔道だけじゃないですよね……打ち込んで来たものの集大成をぶつける大会がなくなる。本当に可哀そうなことで……。でも、皆、こんな時でも自分がやってきたことを続けて欲しいし、小見川道場の子供たちも柔道を続けて欲しいんです」
──いやぁ、パイセンに会ってからもう10年以上かと思いますが、これまでで一番良い話を聞かせてもらっています。
「アハハハ……いや、まぁ……」
──パイセン自身の稽古は今、どうされているのですか。
「続けていますよ。もちろんです。試合は自分を恰好良く見てもらう場で、さっきも言ったようにだからエゴなんです。でも格闘技を続けているのは、試合に勝つためじゃなくて自分が強くありたいからです。
だから試合がなくても、体は鍛え続けていけないです。ただ今は対人練習は全くしていない。自分と向き合う練習ですね」
──自分と向き合う……それはどのように?
「山トレです」
──山トレ?
「道場から走って5キロほど走ると、山トレに絶好の場所があって。まぁ……やっていることは道の無いところで斜面を這って登り、そこからまた下りていくということですけど。上がる時は相当の運動量ですが、下りるときも転ばないようにスピードをつけて下りるので、バランスを取る鍛錬になります。判断力も必要になってきますしね」
──いやぁ、野獣トレですね。
「山に行くと、自然界から色んなモノが見えてきて、色々なことを考えることができます。それを週に3回ぐらいやっています」
<この項、続く>