【写真】取材は15日、午後12時半。普段なら人で溢れているアベマタワー11階の食堂は閑散としていた。BYRON BAY COFFEEも休業中でコンビニのみオープンという状況だった (C)MMAPLANET
今月23日(木)に発売されるFight & Life誌では『Keep Fighting─格闘技は続く─』という特集が組まれている。
MMA、グラップリング、キックから那須川天心、堀口恭司、RENA、青木真也、岩本健汰、チャトリ・シットヨートン、弥益ドミネーター聡志らが新型コロナウィルス感染拡大、主要都市の非常事態宣言下で如何に格闘技と生きていくのかを語る特集のなかで、ABEMA格闘チャンネルの北野雄司プロデューサーがこの1カ月半と今、コロナウィルスが存在し続けるかもしれない将来においての格闘技中継についての取材も行われた。
ここでは17日(金)に開催されるRoad to ONE02でのコロナウィルス対策や、この大会を開く理由の一つを話す氏の言葉を抜粋してお伝えしたい。
sponsored by ABEMAという言葉が見られる大会に関して、「今でも悩むけど……1人じゃないというのを感じています。僕も今は在宅勤務で誰とも会っていないけど、同じ想いの人はいる」という言葉が思わず発せられるなか、北野氏が示した今大会を中継の意味とは。
──『会場を専門業者により1日複数回の消毒を実施、サーモグラフィー・体温計のよる検温、うがい、アルコール消毒を徹底し、3密の状況を極力避け、大会関係者にはマスク着用を義務付ける』などコロナウィルス感染予防策が主催者からリリースで伝えられ、メディアも会場で取材ができないことが通達されました。
「ハイ、この大会に関係する多くの人と意見を出し合って感染者を出さない、万が一出た場合はクラスターを起こさない。感染者が出た場合は、その経路がハッキリわかるという対策を最大限、実行委員会の皆様と考えてきました。
感染者を出さない努力をする一方で、万が一出た場合の対応も想定しないといけないですからね」
──リリースでは言及されていない対策もあるということですね。
「まだ大会までの時間があるので、その時の状況に合わせて変更点も出てくるかと思いますが、まず初歩的な部分としてスタッフ、アスリート、セコンド、全ての人をリスト化して、大会後2週間の後追い健康チェックを行います。
それと今回は急遽会場が変更となったことを受け、会場すぐ近くにある大会議室を借り切り、さらに稼働していないシティホテルを何部屋か借りてソーシャルディスタンスが一定程度確保された選手の控室に当てています。その部屋や会場も消毒作業を徹底します。
スタッフは朝から晩まで会場や控室の隅々まで消毒をすることになっています。実はこの消毒を無料でやってくれるという業者さんが現れて。その方は格闘技界に関わっていた人で、『少しでも格闘技に恩返しをしたい』と言ってくれたんです。
でも実行委員の坂本(一弘)さんが、無償でやってもらうわけにはいかないと。そのような想いや熱量がシンクロするできごとがあって……。正直なところ、それぞれのご家族の気持ちを考えると『なぜ、うちの人間がそこにいる必要があるの』という考え方をもつご家庭もあるはずです。
僕自身、ウチの会社が主催するイベントじゃない。でも、そういうグッとくることがいくつも出てきたんです。現場に入ると、役割や立場などの分け隔てはなく……我が事として予防対策をやらないといけないという気持ちになりました」
──万全を期しても、万全にならない。でも万全に向けての対策ということですね。
「ソーシャルディスタンスをキープすることも当然で、参加選手には地方からくる選手もいますが、公共交通機関を使う時間を減らす、もしくは完全に無くしたいと考えています。
そのなかで決まったのは選手、セコンド、ドクター、スタッフ……関係する人全員は家から会場までドア・トゥ・ドア──車で来てもらうこと。地方の選手は新幹線の駅からになりますが、ここは徹底をお願いしています。
自家用車で来る人はパーキングの負担、そうでない選手は行き帰りをタクシー移動にしてもらい、駐車場代やタクシー代は主催者サイドが支払う。理想をいえば会場に来る人間は朝起きて、夜眠るまで会った人が指折り数えられるような状態にしたいです」
──当日に関しては、接触者の数を減らすよう徹底するということですか。
「距離が近くなるような作業が必要になるスタッフには、使い捨ての防護服を購入しているので、それを着用してもらう予定です。これまで格闘技で汗が飛び散っている写真は良い写真とされていましたが、現状はカメラマンさんにとってはリスクなのかもしれないですし。スタッフの機材も会場に運び入れるまでの期間に消毒をする。この作業は既に始まっていますし、中継が終わった後もやることになると思います」
──そこまでして、「なぜやるのか?」ということは格闘技界内外から挙がると思います。
「これから日本の格闘技界はお客さんが試合を会場で見られるのは、いつになるのか現状見えていないです。
お客さんが会場にこられるようになっても、それは私たちの社会生活が『コロナとともにある状態』になっている可能性だってあります。インフルエンザ、ノロウィルスと同じように練習仲間、家族から伝染る、当然のように病院に行き投薬を受ける……そんな当たり前にコロナのある世界になるかもしれない。そのような世界が来る時のイベント開催、中継フォーマットは、プロモーター……団体さんだけでなく、私たちメディアも確立する必要があると考えています。
お客さんが会場で格闘技を見られるようになるまで、格闘技は無観客大会が続く可能性もある。その判断を団体がしたときに、僕らとしては『このような対策をしているので、中継が可能です』と応えられるフォーマットを提示できるようならなければならないです。
医学的に新型コロナが解明されていくまで、僕らは何が有効なのか、本来は必要ないかもしれないことまで試さないといけない。今はその時期で、これからのwithコロナの時代を迎えるための準備……そんな時代がこないことを想いながらも、そうなってしまう社会を想定した安全な中継体制の準備は必要になる。それも今、やるべきことでもあると考えます。
そのフォーマットは格闘技に限らず、無観客で中継されるスポーツ番組の未来に通じるかもしれない。出場選手やスタッフからすると、17日には『こんなことしないと大会は開けないのか』という想いも出てくるだろうし、当日になって初めて分かることも出てくるはずです。
そんなことを可能にできるのが、今回のメンバーの繋がりだと僕は考えています」
■Road to ONE02対戦カード
<グラップリング・ライト級(※77.1キロ)/10分1R>
青木真也(日本)
世羅智茂(日本)
<ムエタイ72.5キロ契約/3分3R>
緑川創(日本)
西川大和(日本)
<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
祖根寿麻(日本)
後藤丈治(日本)
<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
工藤諒司(日本)
椿飛鳥(日本)
<グラップリング・フェザー級(※70.3キロ)/10分1R>
宮田和幸(日本)
田中路教(日本)
<ムエタイ・ストロー級(※56.7キロ)/3分3R>
HIROYUKI(日本)
ポン・ピットジム(タイ)