【写真】ロクサンのファイトが岡田の胸を突き刺した理由は? (C)Zuffa/UFC
修斗暫定世界バンタム級チャンピオン岡田遼が語りたいUFCプレリミマッチ。
第6回からは20日(土・現地時間)のUFC ESPN11で行われた女子フライ級戦=ローレン・マーフィーロクサン・モダフェリ戦について話してもらった。
──本来は岡田遼のGreat UFCプレリミファイト、1カ月で3試合ということなのですが、どうしても語りたい試合がもう1つあると。
「ハイ。ねじ込ませてください(笑)」
──その1試合というのは?
「ローレン・マーフィーロクサン・モダフェリのロクサンなんです。ロクサンがロックダウンの間も凄く練習しているって聞いていて。で、1月のメイシー・バーバーとの試合が良い勝ち方だったじゃないですか」
──ハイ。
「あの試合のイメージがあったので、『アレっ?』って感じがして。そう思わなかったですか」
──ローレン・マーフィーがこんなにデキるのか、と思って視ていました。
「マーフィー、強かったですねぇ。ロクサンは打撃が凄く伸びていて、ちゃんと練習してきたんだと思うんです。だから打撃ばかり使ってしまったような……。本当ならもっと組み技とか、臨機応変に使える選手のはずなのに。
怪我か何かで、余りレスリングに行けなかったのかと思ってしまうぐらい、寝技が強いのに打撃ばっかりになってしまったなぁっと。
打撃ができなかった時の組みへの執着心と、打撃ができるようになってから組みへの拘りって、やっぱり選手も変わってしまう。いや、本当に練習してきている選手だなっていうは、試合を見ていると伝わってくるんです。そして、余りにも練習してきたことを出して、正々堂々と戦い過ぎていて」
──ロクサンは試合の度に打撃の成長が見える。そんな選手です。
「そうなんですよ。まさにメイシー・バーバー戦なんて、本当に打撃が良くなっていた。思うのですが……ロクサンって僕と同じで、青木さんがいう『素養でいえばBクラス』の人だと思うんです」
──……。
「だからこそ、すごく真面目で、必死に練習してきたことで愚直なまでに勝負をしようとしていた。本当に良い人で頑張ってきた人が、そのままの人の良さで戦っていました。でもMMAってもっと狡くないと。勝つためにも狡猾になる必要もあります。
勝負になると愚直は美徳じゃない。それでも、人が良くて一生懸命にやってきたロクサンに、それを求めるのは僕の気持ちが苦しくなってしまって……。ロクサンって絶対に良い人なんだって、切なくなる試合でした。努力して、積み上げてきて」
──勝負だから勝ち負けは絶対です。でも戦っているのは人間で。ファイターだけど、人間。そこにロクサンらしい素晴らしさがあった。でも、試合は勝たないといけない。
「最終回になり、逆転を掛けて戦いたいロクサンに対して、マーフィーが上手く時間を使った。それでも、ロクサンは打撃でいくしかなかった。そして、打撃を効かせたようになった時にマーフィーがテイクダウンしてしまう。
それこそMMAなんです。でも、いくしかないって打撃で前に出るロクサンもMMAです。ただし、勝つために全力を尽くすってことでいえば、狡く戦うことも全てに含まれている。もちろん、反則はダメですよ。でも、ロクサンはああ戦わないと良さが出ないのかもしれないし。
僕とロクサンは同じで、素養ならBの選手です。でも、ロクサンは僕と違って良い人で、真っすぐで。僕もまぁ、努力ということでは負けていると思わないですが、性格は良くないし、腹黒です。だからこそ、ロクサンの真っすぐさが切なく、心に突き刺さる試合になりました」